CMYKで作っていたデザインデータを、クライアントさんからの要望でDICカラー(もしくはPANTONE)で納品してほしい。と言われた経験ありませんか?
ぼくはあります。しかも、ちょうど先週ありました。しかも、納品後のタイミングで、DICカラー版もほしいと…
とはいえ、年間で3〜4回あるかどうかという頻度ですね。そんなに頻繁にあるものではありません。
このDICカラーやPANTONEでの納品について、いざ「やって」と言われると、ちょっと操作が不安…という方もいると思いますので、自分の備忘録的にも特色カラー変換について、ご紹介したいと思います。
CMYKと特色の違い
まず、カラーを変換する前に、そもそも「なぜDICやPANTONEなどの特色に変換する必要があるのか?」ということを理解するためにも、この2つについて違いを確認しましょう。
- プロセスカラー:CMYKの4色のインクを合わせてカラーを表現する。
- スポットカラー:DICやPANTONEなどの特色でカラーを表現する。
この2つの違いについて確認していきます。
プロセスカラー
イラストレーターで印刷物のデザインをしている場合、最も一般的に使われるのがこちら。
ご存知の通り、印刷の際にCMYKのインクを合わせてカラーを表現します。
CMYKで表現できる色には限界があります。厳密に言うと、薄い色やパステルカラーは苦手と言われており、金や銀など質感込みの色も表現出来ません。
これは、CMYKが”色を混ぜてカラーを表現する”からで、どんな色もインクを合わせて表現します。子どもの頃に絵の具を混ぜて最終的に黒になった経験があると思いますが、CMYKとはまさにこのことです。
薄い色やパステルカラーを表現する時も、インクを合わせて表現するので、特色に比べると暗くなりがちです。(近しい表現は出来るので、あまり深く捉えなくて良いシーンも多いです)
また、印刷機によって微妙に色の違いが出やすいので、色をシビアにコントロールする場合などには不向きと言われます。
とはいえ、通常のチラシやパンフレットなど、紙に印刷して仕上げるような場合は、このプロセスカラーが一般的です。
スポットカラー
このスポットカラー(特色)で、よく指定されるのが「DIC」や「PANTONE」です。
スポットカラーは、「誰がなんと言おうとこの色!」という、1色1色が番号で指定されたインクのことを指します。
なので、CMYKと違って印刷する環境に左右されずに、必ず同じ色に仕上がります。逆に、モニターなどで確認している色とは設定によって違いが出る場合があるので、一般的には色見本と照らし合わせて最終決定します。
また、この特色が使われる環境として恐らく最も多いのが、印刷するものの関係で印刷業者さん側で指定がある場合です。
ぼくの場合は、「大きな看板」とか「瓶のパッケージ」など特殊な印刷であることが多いです。あとは蛍光色や金・銀などの特殊な色を表現する場合ですね。
DICとPANTONE
それぞれのカラーの違いがわかったところで、よく指定される「DIC」と「PANTONE」について簡単に触れておきます。
どちらも、スポットカラー(特色)という意味では同じで、表現できる色にも大差はありません。
どう使い分けるかと言えば、「印刷側の指定に従う」という程度でしょう。印刷業者さんが用意しているインクの対応がDICなのかPANTONEなのか…という判断で良いと思います。
ただし、DICとPANTONEには発行元の違いがあります。
DICカラー
まずはDICカラーについてです。
DICカラーは、DIC株式会社という日本の企業が出している色見本帳です。
日本の企業が出していて、PANTONEよりも歴史が長いので国内ではDICが主流と言われています。
歴史がある分、若干色数も多いようですが、実務レベルでは大差ないと思います。
PANTONE
続いて、PANTONEです。
こちらは、日本の企業ではなくアメリカのPANTONE社が提供する色見本帳。
DICより歴史は浅いものの、毎年トレンドカラーを発表するなど先鋭的で、海外ではPANTONEが主流らしいです。
なので、印刷工場が海外にある…みたいな場合は、色指定をPANTONEでされることが多いですね。
とはいえ、日本ではDICが主流なのは間違いないです。
具体的なカラー変換方法
前置きが長くなってしまいましたが、実際にCMYKで作ったものを特色に変換する方法を見ていきます。
前述まででご説明した通り、日本ではDICカラーが主流なので、今回はDICカラーへの変換方法をご説明します。(PANTONEの場合も同じ操作でカラー変換可能です)
オブジェクトを再配色
まずは、特色にカラー変換したいオブジェクトを選んだ状態で「編集 > カラーを編集 > オブジェクトの再配色」を選択してください。
そうすると、上図のメニューが出てきますので、真ん中あたりにある[カラーグループをスウォッチライブラリのカラーに制限]という部分をクリックしてください。
スウォッチライブラリをDICカラーに制限
そうすると制限する対象を選択するようになりますので「カラーブック > DICカラーガイド」を選択します。
この状態で、右下の「OK」をクリックすれば変換作業は完了です。
この時に、PANTONEなど他のカラーブックを選択することで、その他のカラーに変換することが可能です。
これで近似値への変換は完了
こちらが実際にCMYKから、近似値のDICカラーに変換した四角いオブジェクトです。
操作としては、とても簡単でこれでDICカラーへの変換は完了です。
上図の通り、左はCMYKで右がDICカラーに変換されたオブジェクトです。あくまで近似値への変換なので、微妙に色合いが違うのがわかると思います。
なので、初めからDICカラーで納品ということがわかっていれば問題ないのですが、デザインFIX後にDICカラー版もください。みたいな場合は、「近似値への変換になるので、微妙に色が変わります」という旨を先方に伝えなければいけません。
でも、作業としては簡単すぎて、ちょっとあっけないですよね?
少しだけ補足があります。
近しい色から任意のカラーを選択する
先ほどの、[カラーグループをスウォッチライブラリのカラーに制限]でDICカラーガイドを選択したあとにOKを押さず、上図のように「現在のカラー」部分の右に出ている枠をダブルクリックします。
そうすると、「カラーピッカー」が現れます。最も近しいDICカラー(今回の場合はDIC167s)が既に選択されていて、それに近いカラーがスウォッチ内に順番に並んでいますので、ここから任意で変換後のカラーを選択することが可能です。
クライアントさんから、カラー変換してほしいと依頼があった際に、「どのDICカラーにしましょう?」と提案する際なんかは、ここから近しい色を何パターンか提案してあげると良いと思います。
動画で解説
最後になりましたら、実際の操作などがわかりづらかった方は、こちらの動画でも解説していますので、合わせてご覧ください。
そして、少しでも参考になれば、高評価&チャンネル登録頂ければ嬉しいです。
まとめ
CMYKで作ったデータの特色変換について、具体的な操作方法までをご紹介してきました。
初めから特色で納品するということがわかっている場合は、今回のようにわざわざ”変換”する必要ないのですが、意外とデザイン進行中に印刷のことまで決まってないパターンもあったりします。
そんな時は、この方法でCMYKから特色へカラー変換することで、近似値へすぐに変換可能です。
使えるシーンがあれば、ぜひ参考にしてみてください!