デザインの良し悪しは、それを見る人、使われる環境、その成果など環境によって様々な判断がなされます。
デザインや映像制作などのクリエイティブを内製化している会社を見てみると、会議などで毎回違う意見が出て「デザインが全然決まらない…。」と頭を悩ませている社内デザイナーが非常に多いです。
今回はそんなデザイナーさんのために、デザインの決定までをスムーズに進められるよう、上手な”デザイン決定の進め方”をご紹介致します。
響くプレゼンをしよう
まずは確認なのですが、出来上がったデザインだけを会議で提出している。なんてことありませんか?
正直、これではデザインは決まりづらいです。
会議体にもよりますが、おそらく会議でデザインを提出しているあなたほど、そのデザインについて詳しく知っている人はいないでしょう。
場合よっては、”会議で発言することで自分の評価を上げよう”という変な承認欲求にかられ、本質からズレた発言をする会社員もいます。
そんな意見に踊らされていては時間無駄です。しっかりとデザインの裏付けを理解してもらい、会議の時間を有意義に使いましょう。
デザイン制作を始めた経緯
まず、なぜこのデザインを作り始めたのか。どういう形であなたのところに制作依頼が届いたのか。
これらを簡潔にまとめて、デザインオーダーをまわりのみんなに理解してもらいましょう。
これをする事で、みんなの認識レベルを合わせる事が出来ます。100m走で言うと、ようやくスタートラインに立ってゴールを見れている状態です。
間違っても、「あれ?マラソンじゃないの?」みたいな的外れな質問を、この時点で省くことが出来ますね。
デザインコンセプトを明確にする
みんなの認識レベルを揃えたところで、次はデザインコンセプトを理解してもらいます。
文字で書くのは簡単ですが、実は最も難しい作業かもしれません。
ここはデザイナーの腕の見せどころなので、自分で作ったデザインのコンセプトを魅力的に表現しましょう。
もちろん、会社や事業・商品のコンセプトがあってのデザインコンセプトなので、そことの整合性や位置関係は意識しなければいけません。
使うシーンと目的
デザインの方向性を理解してもらったら、そのデザインがどう使われて、どういう成果を目指しているか。を伝えます。
100m走でいうとゴール部分で、何秒を目指すか。の話ですね。
例えば、既存顧客に送るDMと、面識の一切ない新規顧客の送るDMでは内容や表現が違ってくるはずです。
例えば、キャンペーン等で特設サイトを作った場合、最終的なコンバージョンは”特設サイトで申し込みをしてもらうこと”であり、そこには申し込むフォームが必要で、その特設サイトへ集客するための広告にはQRコードが必要…
というような流れで、デザインには目的があり、その目的達成のためにレイアウトしている。ということを理解してもらいましょう。
ここは、マーケティングとの連携が必要なので、使うシーンと特に目的は事前に連携して決めておきましょう。逆に言うと、これをなくして成果の出るデザインというのはありえません。
初めて参加した人でもわかるプレゼン
これらのプレゼンがバシッと決まって、1回の会議でデザインが決定すれば理想的ではありますが、修正が何度かあって、だいたい3回くらいは会議でデザインを提出することになると思います。
この2回目以降のデザイン提出で大切なのが、“誰がどのタイミングで入ってきても理解できるプレゼン”であることです。
場合によっては、重要なタイミングでキーマンが入っていないようなこともあり得ますし、よく喋る人(表現正しいかな…?)が途中から参加するようなこともあります。
その時に、初回ではこうなって…2回目でこうなって…のように、そのデザインが歩んできたストーリーを丁寧に共有することで、参加者全員がスタートラインに立ってもらえるように心がけましょう。
これにより、状況を把握して建設的な意見を出してもらいやすくなります。
デザインの裏付けを理解してもらうことも大切
ここまで上手にプレゼンし、参加者の理解を得られていれば「なるほど」という空気感がその場を支配してくれるはずです。
あとは、トーンや微調整の話になってきます。
その会議が「デザイン会議」のような、クリエイティブチーム専用の会議で、ここまでの説明が不要なMTGなのであれば話は別ですが、会社や組織としてデザインを決定するような場合、たいてい違う部署の人や、経営陣が参加しているはずです。
普段見ているものも違えば、年齢も遠く、感じることも全く違う人たちです。そういう人たちの承認を得ないといけないのが社内デザイナーの辛い部分ではありますが、まずは「デザインの裏付け」を理解してもらうことが決定への第一歩です。
最終的なアウトプットの表層だけで判断されないように、しっかりと準備しましょう。
会議で意見をもらう場合
プレゼンの準備が出来たら、あとは会議本番です。
プレゼンが上手くいって、そのデザインで決定することを願うばかりではありますが、初回の提出など”会議で意見をもらう”というステップを踏むことも多くあると思います。
この場合、ある程度の線引きと返答を用意しておくことが必要になります。
無理に広く意見を聞き過ぎない
会社によっては、”みんなの意見を反映して”みたいな考えで進めるところもありますが、100%汲み取ることは正直難しいです。
AとBどっちが好きですか?という質問に、”みんな”が同じ答えを出すような会社であれば話は別ですが、実際そんなことはないので不可能です。クリティカルな意見だけを汲み取ったり、みんなが共通して出している意見の一部を汲み取るようにしましょう。
また、意見を聞く範囲を広げ過ぎるのもスムーズにいかない原因の1つです。
自社のデザインに影響を持つ、コアな人たちに意見を聞いて反映するのが最も賢い進め方と言えます。
判断基準を明確に
ここまでのプレゼンで、デザインへの判断基準が“個人の判断ではなく、会社ないし組織の判断”になっているはずです。
なので、個人的な好き嫌いでモノを言ってくる人がいれば「コンセプトがこうなので…」と説明し、レイアウトや掲載内容にモノを言ってくる人がいれば「こういうシーンで使われて、目的がこうなので…」と説明してあげましょう。
もちろん、真っ当な意見は真摯に受け入れてブラッシュアップしていきますが、判断基準からズレた意見は参考にしてはいけません。
みんなの総意は反映したけど、成果がでない…というのは何の意味もなく、デザイナーが責められる理由にもなり兼ねません。気をつけて!
決定に向けて着実に進めていく
意見を聞いた次のステップは、会議で出た意見をもとに修正案を提出することです。
ここで大事なのは、修正ポイントと方向性に対して同意してもらうことです。
おそらく、参加者から様々な意見が出ると思います。この時に”どの部分をどういう風に修正するか”を会議の時点で自分なりにまとめて、「この部分をこういう修正で良かったですよね?」とコンセンサスを取っておきましょう。
そして、次回のデザイン提出プレゼンで「前回、こういう修正要望が上がりまして…」と前置きして始めます。これで1歩ずつではありますが、決定に進んでいることになります。
逆に、これがないと次のステップに繋げにくくなり、同じところで停滞してしまう事になります。これらの繰り返しで、少しずつでも完成に向けて進めていってください。
最後に
ちょっとしたコミュニケーションのテクニックも含まれますが、これらを実践すれば、スムーズにデザイン決定へ進めていけるはずです。
ぼく自身、会社員時代はこれを実践していましたし、今でもクライアントさんにデザインを提出する時は、これらを心がけています。阿吽で進められるようになれば、もちろんここまでの準備や説明は不要です。社内でそういう立ち位置を取るためにも、これらを実践してあなたのデザインで成果を上げてください!
ちなみに、社内デザイナーの天敵は「鶴の一声」ですね。会議で確実にデザインを進めてきたのに、決定寸前で発動する必殺技です。
こういった、「やっぱり、こうじゃない?」「いいから、こうして。」みたいな意見が終盤で出るような体制であれば、まずはそれを見直した方が良いです。デザインとかのレベルじゃないですが、確実にデザイナーにも影響を与えるものです…
少なくとも、意思決定のプロセスは明確にしておいた方が、無駄な作業をする事なくスムーズに進められます。
社内デザイナーのみなさんが、無駄な時間を過ごさないためにも、参考にして頂ければ幸いです。