「デザインの校正」って、みなさんどう考えてますか?

みなさんは、デザイン制作を行う過程で、デザイナーさんと「校正」という作業をした事がありますか?

名刺であれ、パンフレットであれ、webサイトであれ…デザイナーさんが作ったものに対して修正を依頼し、完成に近づけていく作業の事ですね。

これから初めて「校正」という作業を始める方も、これまで経験がある方も、この「校正」というものをどのように捉えているでしょうか。

実は、デザインを依頼する側(クライアントさん)とデザインを作る側(デザイナーさん)で、意外と認識が違う場合があります。トラブルを未然に防ぐためにも、デザインの校正について、改めて確認しておいてほしい事を、ぼくら制作側の意見と交えてご紹介します。

校正とは

印刷工程の途中で,校正刷りと原稿を照合し,文字の誤り,不備,不正確,不統一,不手ぎわ,レイアウトの違いなどを正す仕事。

引用:コトバンク

わかりやすく意訳すると、依頼側が伝えた内容と、制作側が作ったものに違いがないかを確認する作業という事ですね。

「校正」というのは、もともと書籍の出版などで使われていた言葉ですが、この”違いを正す作業”として、今では様々な業界で「校正」という言葉が使われています。

今回は、この「校正」と呼ばれるものうち『デザインの校正』についてです。

つまり、「打ち合わせなどで双方が決定した内容に基づいたデザインになっているか」というものを確認していく事になります。

校正にまつわる専門用語

具体的な話に入っていく前に、この「校正」を進める中でよく使われる専門用語を簡単に解説しておきます。

初稿と初校

漢字1文字違うだけで、どちらも「しょこう」と読みますが大きな違いがあります。

  • 初稿:デザイン依頼側がデザイナーに提出する原稿のこと。
  • 初校:依頼側から初稿を受け取り、デザインを施したものを最初に提出するもの。

簡単に説明するとこうです。

打ち合わせなどで、その場で作っちゃう場合もありますが、まずは依頼側から初稿が出て、それを受け取ったデザイナーが制作に入る。という流れが一般的ですね。

アカ入れ(赤字・朱字)

これは、使う人によって言い方が違いますし、書き方が違う場合もありますが、全て「修正」の意味です。

デザイナーが出したものに対して、「ここをこういう風に修正してください」と戻す場合に使われる言葉です。

学校の先生とかも、間違いは赤ペンで直してましたよね。かつての出版業界とかでも、”赤ペンで間違いを正す”という風習があったようで、そこから来ている言葉だと思います。

演技が悪いから「赤」という文字を使わずに、アカとか朱(あか)を使う人もいます。

第2校、第3校…

初校に対してアカが入った場合、それを反映して依頼側に戻すわけですが、戻す際に「何回目の提出なのか」をわかるため数字を振ったものです。

当然、第2校というのは2回目の提出、第3校は3回目の提出となります。

コミュニケーションがうまくいってない場合は、修正を繰り返し10校とかまでいく場合もあります…

校了と責了

どちらとも「了」という終わりを表す漢字が入っていますね。

  • 校了(こうりょう):校正が終わり、デザインが完成です。という意味。
  • 責了(せきりょう):修正箇所が微々たる場合に使われる言葉で、あとはデザイナー側の責任(判断)で校了です。という意味。

校了は、デザイナーが聞いて一番嬉しい言葉です。(たぶん)

依頼側から校了の返事をもらえたら、そのデザインは完成。印刷物であれば印刷業者に、Webサイト等であればエンジニアにデータを渡して制作を進めていきます。

一方、責了はあまり聞かない言葉かもしれません。使われない場合も大いにあります。

たとえば、文章の一部差し替えや、画像の差し替えなど“修正はあるものの、簡単な修正だけ”が残っている際に依頼側が使う言葉で、「あとは任せた!」的な言葉です。納期が迫っているので早く進めたい場合などに使われます。

デザイナーとしては責任がこちらにあるので、ちょっと怖いですが、信頼されている証でもあったりするので嬉しい場合もあります。ここでミスしたら最悪ですけどね…

理想的な校正の進め方

「理想的な校正の進め方」を図解したもの

それでは、具体的な「デザインの校正」について入っていきます。

実際にはもう少し修正などが細かく入ってきますが、ここに図解した流れは、極めて理想的な流れです。

  1. 【制作側】初校提出
  2. 【依頼側】確認&修正依頼
  3. 【制作側】修正を反映させて完成

これらの項目と注意事項を見ていきましょう。

1.初校提出

依頼側と打ち合わせをし、その後初稿を頂いたうえでデザイナーが制作。デザインが仕上がったところで、依頼側に初校を提出します。

デザインを進めるうえで、ぼくはこの初校が一番大切だと思っています。せっかく打ち合わせをして、制作に取り掛かったのに、イメージと違うものが出て来たら嫌ですよね。

デザイナーは、それぞれ少なからず”自分のカラー”というものを持っています。こういうデザインが得意、こういうテイストが得意、イラストが得意…など様々です。

あらかじめ自社の世界観に合ったデザイナーを選ぶことが最も良い方法ですが、そう簡単に見つかるものではありません。

特に、そのデザイナーに初めてデザインをお願いする際は、自社のことをよくよく伝えるべきです。自社のコンセプトや目指す世界観、過去の制作物など、出せる物は全て出してください。

その次に、今回の制作物の詳細をすり合わせするべきです。そうする事で、デザイナーは自分の色と掛け合わせて、他にはないオリジナルの良いデザインが上がってきます。

間違っても、具体的な制作物の話だけで打ち合わせを終えないようにしましょう。

2.確認&修正依頼

デザイナーが提出した初校を確認し、修正があれば、それをわかりやすく明記してデザイナーに戻す作業です。

この段階で修正が多いという事は、どこに原因があるかは置いておいて、あまりデザイナーと意思疎通が取れていないという証拠です。もちろん、デザイナー側もヒアリングが不足している証拠ですね。

ここで一番覚えておいてほしいのは、修正を指示するという事は「その方向に進め」と指示している事になる。という事です。

たまに、一度出した指示を無視して「やっぱりこうが良い」と、何度も何度も色んな方向を指し示す方がいます。これではいつまで経っても前に進みません。

こういう指示を聞いていると、「そもそも自分の中で方向が定まってないのでは?」と疑ってしまいますし、デザイナーも「次からここの仕事は受けたくないなぁ」とモチベーションが下がってしまいます。

もちろん、修正はあって然るべきですが、“校正を進める”という事は1歩ずつ完成に向けて進めなければいけません。

出て来たものが、イメージと全然違っているのならば、それを直接伝えて改めて打ち合わせしたり、別のデザイナーに依頼することを検討した方が良いです。

3.修正を反映させて完成

修正の回数は、その時々でバラバラだとは思いますが、修正を重ねてデザインを完成させていきます。

デザインの場合、修正の内容には様々な要因が含まれます。

画像の差し替え、テキストの修正、カラーの調整、レイアウトの修正など、その内容は多岐に渡ります。

デザイナーに修正指示を出す立場にいるあなたは、会社を代表して修正指示を出している。という事を改めてご確認ください。

間違っても、完成間近まで進めていたデザインを「社長に確認したら全然違うものだったので…」みたいな修正をしないよう。しっかりと社内の意見も集約しておきましょう。

デザイナーの本音

本音を叫ぶデザイナー

おおよそ、「デザインの校正」についてはご理解頂けたかと思います。

最後に、我々制作側が考えている事を少しだけお話します。これは完全に制作側の意見なので、参考までにご覧ください。

修正回数の制限について

前述の通り、稀にとんでもない修正指示をしてくるお客様がいらっしゃいます。

お互い仕事としてやっているので、それについてどうこう言うつもりはありませんが、こういった背景もあり修正回数に制限を設けるデザイナーさんも増えて来ています。(というかそれが普通かもしれません…)

本来は、お互いが納得するものを作り、納品し、活用して頂くのが理想的ではありますが、デザイナーも仕事なわけですから、いつまでも付き合っている場合ではありません。

修正回数に制限を設けた方が、しっかりと社内で吟味して修正指示を送ってくれる。という考えもあるかもしれませんが、修正の回数は意識しましょう。

個人的な意見ですが、修正が10回を越えるのは若干異常値です。

ご自身の業務に置き換えると…

修正に関しての苦悩を抱えるのは、デザイナーばかりではありません。

今のご自身の業務にこれを置き換えてみてください…

お客様と色々と決め、もうすぐ完成というとこまで進んでいたものが、数ヶ月前の状態に戻るみたい事ってありませんか?

どの業界の、どの業種の人にも言える事だと思います。お互いを思いやる気持ちは大切ですよね。

便利な時代だからこそ

デザインは、基本的にデータで作っているので修正は何度でも可能です。だからと言って、色んなパターンを作って、何度も何度も修正を重ねるのは良くない事だと思っています。

映画製作現場での、こんな話があります。

デジタル時代になった今、何度も撮って、ダメなら消して、また撮って…が繰り返し行えます。言い方を変えれば、気軽に撮影が出来るようになりました。

反対に、フィルムで撮影していたアナログ時代はどうでしょうか。

撮り直しが出来ず、撮影媒体であるフィルムも有限。1カット1カット、演者もスタッフも準備に準備を重ね、最高の瞬間を撮影しようと取り組んでいました。

アナログとデジタル、どちらにも利点はあります。

みんなが気持ちよく、最高のものを作れるようになる選択をしていきたいものです。

結局どうするのがベストか。

最善の方法は内製化?

デザインの校正から、デザイナーの考えまで色々とお話してきましたが、結局どうするのが一番良いのでしょうか?

順を追って、いくつかご紹介します。

デザイナーと綿密な打ち合わせ

すぐに取り組める事としてはこれです。

もし、今のデザイナーと意思疎通が取れてないと感じているのならば、すぐに打ち合わせすべきです。

これまでの制作物を見て、デザイナーとの考え方にどれくらいギャップがあるのか確認するのが良いでしょう。

定額でデザイナーと契約

もう一歩踏み込めるならこれです。

単発で、制作物ごとにデザインを発注している場合、どうしてもコミュニケーションが疎かになってしまいがちです。

これは、物理的な時間も要因としてあげれれますが、デザイナー本人の意識としても、そうなっちゃうものだと思います。

単発で、次いつデザインの依頼があるかわからないA社と、定額で毎月デザイン案件の相談があるB社ならば、当然B社の事をより多い時間考えますし、コミュニケーションの質も上がります。

金銭的な部分も絡むので、状況によって難しい場合もありますが、自社のデザインの質を上げたいとお考えの方は検討してみてください。

デザイン制作の内製化

極端に聞こえるかもしれませんが、ぼくは「自社で生まれたものが一番強い」と考えているので、最終的には内製化すべきだと思っています。

定額契約の延長線みたいな形ですが、自社内にクリエイティブの制作部を作りましょう。

そうすることで、デザイナーとのコミュニケーション不足は当然なくなりますし、広く見ればスピード感やコストダウンにも繋がります。

何より、自社の色をより濃く発信していける事になるので、ブランディングの観点からも内製化をオススメしています。

これも、社内の状況や会社の規模に左右されるので、一度検討して見てください。

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PROFILEわたしが書きました

みやざわ

『Sokoage Magazine』の管理人です。
Sokoageの代表として、デザイン/マーケティングの仕事をしています。 尊敬する人物は、ジャッキー・チェンとプロゲーマーのウメハラさん。K-POPと中華料理が大好きで、ゲーム・漫画・映画を嗜みます。北海道帯広生まれ。