映像コンテンツの普及とともに、じわじわと広がっている映像制作の社内制作である、いわゆる”インハウススタジオ”。
いいコンテンツとわかっていても、例えば一本の映像に入れこめる情報には限りがあります。それをもし社内で内製化できれば、継続的にコンテンツ発信ができるかも…。では、社内で内製化したときのメリットとデメリットってどんなことがあるのでしょうか。外注での制作と比較しながらご紹介したいと思います。
映像制作を外注で制作する際の壁
まずは、「映像コンテンツが欲しい」と思い外注に映像制作を依頼した場合、どういった障壁があるのでしょうか。
費用がかかる
時流に乗って映像制作を依頼しても、そのコストはチラシなどの制作物とは大きく違います。デザイン料と印刷代あわせて十数万円に対して、映像制作の場合は平気で30~40万円かかります。しかも、できあがったものはあくまでもデータです。物でない分、「高い」と感じてしまう人も多くいます。
掲載するプラットフォームが必要
これも映像制作にありがちなのですが、例えばいざ会社紹介PVを作っても、映像を使うプラットフォームが全く整っていないという状況です。テレビCMなんかは単純なのですが、1中小企業が作った映像を効率的に発信していくには、自社サイトが整っていないといけない、SNSを継続的に運用している、など、映像を制作する以前の障壁がいくつかあります。
継続制作が難しい
これもよく僕自身がお客様から相談されることが多々あるのですが、例えばYouTubeでコンテンツマーケティングとして継続的にユーザーの欲しい情報を映像で発信し、ビジネスに役立てようと考えます。
YouTubeも中長期的にSEO対策をしなければ、なんの成果も出ないので、必然的に継続的な映像制作が必要となります。そうなったときに、毎回投稿する映像を外注に頼んでいると、オウンドメディアを運用するよりはるかに高いコストがかかってしまいます。映像制作を外注に頼っている場合、継続的な制作はかなり難しいこととなります。
単発であれば、外注が効率的
映像制作の依頼というのはそもそも、そこまでコンスタントではありません。僕も同じクライアントから受ける依頼は、多くても年間に6本程度です。つまり2ヶ月に一回程度。チラシなどのデザイン系制作物は、多いと1ヶ月に数回制作依頼しますよね。
基本的に、映像制作の依頼は”単発”であることが多いです。例えばテレビCMの場合、まずは広告代理店が企画や内容を決定し、制作会社に依頼します。制作会社からすれば、クライアントは広告代理店で同じでも、取り扱うCMのエンドユーザーは毎回違うはずです。
ですので、映像制作の仕組みは、基本的に常に新しい顧客や代理店などを相手に商売することが多くなります。映像制作者側もむしろそういう考えで、どうやって新しい顧客を見つけるかがビジネスのキーになります。
映像制作は、例えば自社サイト用の会社紹介PVを制作する、だけなのであれば単発依頼が基本的な考え方となります。
映像制作を内製化するメリット・デメリット
では、実際に映像制作を内製化した場合どうなるのでしょうか?
映像制作内製化のメリット
- 継続的な映像制作が見込める
- 社内の人間がよく知る魅力を映像で発信できる
- 社内の人間関係が円滑になる
- 自社を客観的にみることができる
- 今後の時代の流れに一足先に乗れる
- それ単体が事業となることがある
映像制作を内製化することで、様々な利点がでてきます。
それは人間関係ベースだったり、会社の事業ベースだったりと様々ですが、何より、今後の時代の潮流に乗りながら、継続的に映像制作を行えるというメリットはかなり大きいものです。
事業ベースで見ていくと、今後、5Gが普及していき、スマホでの映像再生への壁がどんどんと下がっていくと、映像に対する需要はより高まります。今はテキストを使って説明していることも、全て映像で説明することになるかもしれません。
そうなったときに、他社より先に最先端のコンテンツの制作が自由にできるという体制があるかないかでは、ビジネスに大きな影響が出てきます。
さらに社内の人間関係で言えば、映像制作をインハウススタジオを設けて内製化した場合、いい意味で変化する可能性を秘めています。
一つの映像を制作するにあたって、他の人の協力というのは不可欠です。また、限られた尺の中に情報を入れ込んでいくということは、商品やサービスを端的に、誰でもわかるように説明しなおす必要があるということです。
こういった制作の過程を追っていくと、新しい気付きや、改善すべきポイントが出てくるかもしれません。僕も実際に、各社で映像制作を進めていく中で、一例をあげると「ここの窓は汚れていて映像での写りが悪い。この窓っていつも汚れているのか?じゃあお客様も同じことを感じているかもしれない」と、クライアント自身が自分の会社を見直す機会が生まれたことがありました。
このように、映像制作というビジュアルと中身が大切なコンテンツを制作するにあたり、自社を客観的に見直す機会ができるという大きなメリットがあります。また、それにより社内でのコミュニケーションがより円滑になるかもしれません。
映像制作内製化のデメリット
- 人的コストがかかる
- 初期費用がかかる
- プロのクオリティには敵わない
- マーケティングの視点も必要
メリットを述べたところで、次にデメリットです。
まず、映像制作の基本的な工数は準備に3日間、撮影が1~2日、編集に3日間、という感じです。これは求める映像によって大きく変わってくるため、一概には言えませんが、平均的にクオリティを維持しながら映像をこしらえようとしたときにかかる時間です。
まずこれに割く人的コストが結構かかります。社内で内製化する場合、普段の業務と併用してやらないといけないため、もっと時間がかかってしまう可能性もあります。
映像の雛形、例えば社内の各部署の複数名のインタビュー動画を制作するなどを用意しておけば、このあたりの工数や人的コストは大幅にカットできます。
あとは導入の際に初期費用が結構かかります。それなりの機材を全て揃えれば30~40万円ほどかかります。これを一回の動画発注の金額と考えるかどうかは、内製化を行う会社次第ですが…。
さらに機材を揃えたとしても、プロのクオリティには敵いません。映像のプロたちは、日々新しい機材でスキルをブラッシュアップして、実際の現場では撮影とディレクション、照明、カラリストなど、分業制をとって自身の仕事に集中するくらいです。そこから生まれるクオリティは、素人目にはわかりにくいかもしれませんが、怠れば際限なくクオリティは下がってしまうため、プロは妥協しません。
しかし、機材の進化から、「誰でもRECボタンを押せばある程度は綺麗に撮れる」時代がきているため、この辺りはセンスの問題になるかと思います。実際にカメラを導入して自社で会社紹介のPVを使った方を知っていますが、ある程度のセンスがあればきちんとした映像は作ることができます。
最後に、映像を作る上でマーケティングの視点も必要になります。これは全ての制作物に言えることで、社内にそういった役職の方がいれば問題になりませんが、所謂「何を伝える」映像を制作し続けるかが問題となります。
だらだらと自社のサービス紹介を大量のテロップと共に紹介している映像ができあがったとして、自社サイトに貼り付けても誰も見ませんよね。必要な情報に特化して、ユーザーとの共通言語を見つけ出す能力がある人がいれば、なお効果的な映像制作を続けることができます。
求めるものから判断する
内製化のメリット、デメリットを述べたところで、具体的な判断の基準を紹介します。
単発の映像を作ることが多い
映像コンテンツの継続的な配信にあまり魅力を感じず、サービスごとの紹介映像や、会社のブランドPVがあればいいという方には映像制作の内製化はオススメしません。一言で言えば、定期的に映像を作っていない、作るつもりのない方です。
こういった場合、無駄に社内のリソースを割いてしまったり、費用がかかってしまったりするので、胸を張ってプロに任せた方がクオリティの担保も利きますし、効率的です。
一番ダメなのが、中途半端に社内で作ってしまったものを表に出してしまうことですね。
継続的なコンテンツ制作に興味がある
自社サイトやSNSなどで、自社が紹介できる魅力が多いにある場合(取り扱っている商品が多い、こだわりがある、面白い取引先が多いなど)は、継続的に映像を内製して発信することをオススメします。
例えば社内の毎週誰かが地方に行ってこだわりのある取引先を探している、などの場合は、その人が映像も撮れる担当になると一石二鳥になりますよね。そういった一般のユーザーが知らない情報が、流動的に社内に入ってくる場合は、映像制作の内製化をオススメします。
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とは言え、いざクリエイティブの制作を内製化しようと思っても、どういったところから着手して良いかわからない…という方も多いはずです。
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最後に
映像制作の内製化について紹介しました。
映像制作は、時間もコストもかかってしまうため参入障壁が高く思われがちですが、展示会に定期的に出展している企業や、取り扱いサービス/商品の多い企業、こだわりのある企業にとっては喉から手が出るような理想的なコンテンツです。
映像制作を内製化するのにはそれなりのリスクが生じます。ただ、「誰でもスマホで動画を作れるでしょ」と安易な考えで映像を発信してしまうと、企業ブランドを損なってしまったり、思わぬ損失を招くことになります。
そのあたりの意識の高い企業の方は、スマホのアプリでライブ配信をする際にもきちんと機材を構成して行なっています。
細かいところですが、企業が発信するコンテンツの底を上げていくことが、これからの豊かな社会にも繋がると確信しています。